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研究課題名
僧帽弁輪石灰化の初期発生について
共同研究者
氏名 | 所属 | 職名 |
---|---|---|
沢辺元司 | 東京都老人医療センター剖検病理科 | 部長 |
Arounlangsy P | ラオス国立大学医学部病理学教室 | 講師 |
研究内容
僧帽弁輪石灰化(MAC)は高齢者の剖検例でしばしば見られ,変性性弁膜症を起こしうる.本研究では高齢者180連続剖検例の心臓を肉眼的観察,軟線X線撮影によりMACの有無を検討した.MAC症例では僧帽弁輪全体を5mm間隔で全て切り出し病理組織学的に検索した.女性では23%,男性では15%に MACを認めた.MACの大部分は僧帽弁後尖部に見られた.非MAC5例では全例で僧帽弁輪に顕微鏡的石灰化,脂質沈着を伴う変性巣を認めた.弁輪間質細胞はビメンチン陽性で少数の細胞はα-平滑筋アクチン陽性であり筋線維芽細胞への分化を認めた.電子顕微鏡的には間質に多数の細胞変性産物を認め,カルシウム,リン酸の沈着を認めた.多くの間質細胞が一本鎖DNA陽性でTUNEL反応も陽性であった.以上より,僧帽弁輪の顕微鏡的石灰化がMACの初期像であった.この顕微鏡的石灰化巣はおそらくアポプトーシスや壊死をおこした間質細胞から放出された細胞変性産物にカルシウム沈着が生じることにより発生した.