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研究課題名
加齢に伴い増加するミスマッチ修復遺伝子プロモーター領域のメチル化・マイクロサテライト不安定性を示す大腸癌の特徴
共同研究者
氏名 | 所属 | 職名 |
---|---|---|
新井冨生 | 東京都老人医療センター臨床病理科 | 医長 |
笠原一郎 | 東京都老人医療センター臨床病理科 | 医員 |
沢辺元司 | 東京都老人医療センター臨床病理科 | 部長 |
本間尚子 | 東京都老人総合研究所老年病のゲノム解析チーム | 研究員 |
相田順子 | 東京都老人総合研究所老年病のゲノム解析チーム | 研究員 |
田久保海誉 | 東京都老人総合研究所老年病のゲノム解析チーム | 研究部長 |
江崎行芳 | 狭山病院病理部 | 部長 |
菅井 有 | 岩手医科大学分子診断病理学 | 教授 |
中村眞一 | DPR株式会社(前岩手医科大学臨床病理) | 医師 |
研究内容
高齢者に集積のみられるmedullary type低分化腺癌の発生において、hMLH1遺伝子プロモーター領域のメチル化がどのような意義を持つかを明らかにすることを目的として,65歳以上の大腸低分化腺癌切除例35例(男13例、女22例、65〜99歳、中央値78歳;medullary type23例、pleomorphic type 12例)を対象とした。臨床病理学的検討に加え、hMLH1蛋白発現、マイクロサテライト不安定性(MSI)、hMLH1遺伝子プロモーター領域のメチル化を検討した。その結果,Medullary typeではhMLH1遺伝子のメチル化が83%、hMLH1蛋白発現異常が91%と高率に認められたが、pleomorophic typeではそれぞれ14%、17%であった。MSIはmedullary type 87%、pleomorphic type 40%であった。Medullary typeは右半結腸発生、腫瘍内炎症細胞浸潤、低リンパ節転移率、比較的良好な予後という特徴とともに、hMLH1遺伝子のメチル化、hMLH1蛋白異常発現、MSIとの関連が有意に認められた。以上の結果より、medullary type低分化腺癌は特異な臨床病理像を示すことが明らかになり、この腫瘍の発生にはhMLH1遺伝子のメチル化が重要な役割を演じていることが示唆された。また,MSIを示す大腸癌と組織型・年齢との関連を検討したところ,MSIは低分化腺癌・粘液癌で高率にみられ,低分化腺癌では加齢とともに増加した.これはmedullary type低分化腺癌の増加に起因するものであった.