HOME > 病理解剖例を用いた共同研究事業一覧 > 高血圧性心筋症(高血圧性心肥大・心不全)関連遺伝子の同定に関する研究
研究課題名
高血圧性心筋症(高血圧性心肥大・心不全)関連遺伝子の同定に関する研究
共同研究者
氏名 | 所属 | 職名 |
---|---|---|
木村彰方 | 東京医科歯科大学難治疾患研究所分子病態分野 | 教授 |
和泉徹 | 北里大学医学部循環器内科 | 教授 |
勝谷友宏 | 大阪大学医学研究科老年・高血圧内科 | 講師 |
沢辺元司 | 東京都老人医療センター剖検病理科 | 部長 |
研究内容
高血圧の生命予後因子のひとつとして、高血圧が続くと心肥大を生じ最終的には心不全に至る高血圧性心筋症がある。高血圧性心筋症の発症には高血圧の程度や継続期間があるが、同程度の高血圧が同程度の期間続いたとしても高血圧性心筋症の発症には個体差があり、この個体差はヒトゲノム多様性に起因すると考えられている。我々は高血圧性心筋症の発症に関わる遺伝子の同定を目的として、まず高血圧モデル動物(Dahl食塩感受性高血圧ラット)の心肥大期および心不全期の心筋を対象として網羅的遺伝子発現解析を行った。その結果、心筋に特異的に発現するBMP10が心肥大期、心不全期に発現が亢進することを見出した。ついで高血圧性心筋症患者および一般集団を対象としてBMP10遺伝子の変異解析を実施したところ、高血圧性心筋症と有意に関連する稀な多型(Thr326Ile)を発見した。ついでこの多型による機能変化を生化学的、細胞生物学的手法を用いて検討したところ、BMP10はZ帯タンパクである Tcapと結合すること、Thr326Ile多型はTcapとの結合性を減弱すること、Thr326Ile多型は細胞外へのBMP10分泌を亢進することを見出した。さらに、ラット心筋細胞を用いて、BMP10は心筋細胞の肥大因子であることを明らかにした。以上より、BMP10多型は心肥大作用を介して高血圧性心筋症の発症を規定するものと考えられた。