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研究課題名
JG-SNPデータベースを用いた癌関連遺伝子多型ならびに女性ホルモン代謝酵素をコードする遺伝子多型の解析
共同研究者
氏名 | 所属 | 職名 |
---|---|---|
鈴木基文 | 東京大学大学院医学系研究科外科学専攻泌尿器外科学講座 | 講師 |
研究内容
東京大学医学部泌尿器科学教室の鈴木らは、エストロゲン代謝遺伝子catechol-O-methyl transferase (COMT)に存在するVal158Met多型が前立腺癌早期発症と関連すること、また前立腺癌治療薬リン酸エストラムスチンナトリウムの治療効果の判別に有効であることを見い出した。Val158Met COMT遺伝子多型は乳癌及び前立腺癌の発症リスクに関連しているという報告がある一方、COMTが内因性カテコラミンの不活化に関連する酵素であることから、パーキンソン病、統合失調症の発症リスクにも関連していることが報告されており、様々な疾患(悪性新生物、精神疾患など)の発症リスクや発症年齢などと密接な関連があると思われる。
そこで、科学技術振興機構(JST)と老人医療センターとで共同開発し、現在も運営しているJG-SNPデータベースに登録された症例を用い、前立腺癌・乳癌に関連する遺伝子(HPC1, HPC2, AR, ER, Vit D receptor, CYP17など)の多型ならびに女性ホルモン代謝系酵素をコードする遺伝子(Val158Met COMT, CYP1A1, CYP1A2, CYP3A4など)の多型、疾患発症リスク、発症年齢などを検討する研究を計画した。最近では、前立腺癌発症に関わる遺伝子多型の研究も進めており、その成果としてCYP2B6遺伝子の一塩基多型が前立腺癌発症リスクと有意に相関することや、欧米人において前立腺癌発症リスクと関連するとされてきた染色体8q24上の一塩基多型が日本人においても有意に相関することを示した。また、前立腺ラテント癌と臨床癌の病理学的、遺伝学的相違についても研究を進めている。最近では、染色体8q24上の一塩基多型が日本人における前立腺癌の予後と相関することを発見し、第26回欧州泌尿器科学会ではthe Best Poster Presentation賞、第99回日本泌尿器科学会でも総会賞に採択され、評価を受けている。